DITAは、マニュアルにそれなりの予算がかけられる場合において、航空機や電子機器、自動車、半導体、エンタープライズ向けのソフトウェア技術書など大規模な技術ドキュメントの制作効率化に効果を発揮します。導入企業は主に海外企業が多く、日本国内での導入事例はまだそれほど多くないというのが現状です。
DITAによるドキュメンテーションフローは、単に文書の構造化を目指せばよいというわけではなく、ドキュメントを製品の設計製造プロセスの成果物として位置付けるため、設計部門や品質部門など、ドキュメント制作部門以外も巻き込んだ大規模なプロジェクト体制を構築する必要があります。まず、トピックの執筆は、DITAの仕様を理解したエンジニアが行い、CMSやGitなどの共有環境にトピックをアップします。執筆したトピックに対して、管理者が、仕様通りにトピックが書かれているかどうかのチェックと共に、版数の管理や用語チェックなどを行います。このように、DITAのドキュメント制作フローでは、関係者全員がDITA仕様を正しく理解し、ルールに則って制作業務を運用してゆく事が求められます。
DITAは、従来のように設計部門が執筆した仕様書や設計書をテクニカル・ドキュメントのライターがライティングし直し、DTPで印刷物向けのドキュメントを作成するというプロセスとは一線を画すため、組織改編を前提とした、数年単位のプロジェクト構築期間と、DITAの仕様も含めたメンバーの教育を十分に行う必要があります。つまり、DITAドキュメントの制作プロセスへ移行するには、十分な予算と期間が必要となります。
DITAの元となる考え方であるトピックライティングのみの導入にとどめた場合は、DITAほど厳密な運用フローを求めませんので、大規模な製品に付随する操作マニュアルだけではなく、業務用設備機器や電子部品、輸送機器やソフトウェアのマニュアルなど、小~中規模の技術ドキュメンテーションの効率化にも効果を発揮します。また、トピックライティングは、多言語展開を行っている・HTMLによる電子マニュアルも同時に提供している・改訂の頻度が多いなどの要件において、1冊のボリュームが少なくても、十分に費用対効果を上げることが可能です。
トピックライティングは、ドキュメントの制作単位をページ単位からトピック単位に切り替えることが必要条件となりますが、DITAのような設計製造プロセスとの一体化や、大規模なプロジェクト体制の構築、DITA仕様を理解するための教育などは必要とされません。トピックライティングでは、従来のマニュアル制作フローや体制をそのまま維持しながら、ドキュメントを効率良く作成することも可能にします。テクニカルドキュメントのライターは、執筆環境をDTPソフトやMS Wordからトピックライティングが可能なエディタに変更するだけで良く、ドキュメントの管理者も、トピックが最低限必要なルールに則って作成されたかどうかだけを確認すれば良いのです。
このように、トピックライティングのみに絞って導入を行う場合、DITA導入にかかる費用の数十分の一の費用で、構造化ドキュメントの制作運用フローを構築し、マニュアルの標準化や、コンテンツの一元管理~紙媒体と電子マニュアルの並行運用といったことが可能となります。
マニュアルやトリセツ(取扱説明書)制作業務の見直しが検討される段階では、まずDITAの導入が考えられるケースが多く見られます。しかし、そもそもDITAの導入には、それなりの予算に加え、組織改編と長期的なプラン作りが必須条件であるため、様々な観点から慎重に判断することが重要となります。事例は海外企業のものが多いため、他社で導入を検討しているから、といった理由で自社に適用するような安易な導入は避けるべきです。
それでもDITA導入を実現したい、という場合は、自社の製品の特長や、顧客ニーズ、マニュアルやトリセツ(取扱説明書)制作や管理上の課題をしっかりと抽出した上で、DITAの導入から運用、維持するための十分な予算を関係部門と調整したうえで確保し、DITAを理解するための教育(意識改革)と技術面のトレーニングにも時間を十分にかけて実施することが必要です。さらに、DITAで最も重要なのは、「IA(Information Architecture)」と呼ばれる情報設計です。大量のドキュメントを専門家が分析し、構造化や部品化の要件を決めるこのIAプロセスは、最短でも6か月~1年以上必要と言われています。
これに対して、トピックライティングのみに絞って導入を進める場合は、3か月程度でPoC(Proof Of Concept)や運用検証を進めつつ、場合により既存のマニュアルを簡易的に構造化するコンサルティングを実施するといった、トライアルプロジェクト形式によりスモールスタートで始めることができるのが特長です。既存のマニュアルコンテンツが構造化されていれば、トピックライティングが実現可能なCMSの機能を活用することで、たいてい簡単に構造化データとして取り込むことが可能です。PoCを実施する場合であっても、いきなりDITAで行うよりも、トピックライティングのみ実施する形に絞っておき、発展形としてDITA導入を検討する方が良い場合もあります。したがって、まずはトピックライティングによるドキュメンテーションから始めてみることをお勧めします。
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