規程集電子化システム

株式会社福岡銀行様/株式会社広島銀行様

銀行業務のガイドラインとして用いられる「行規集」「事務取扱要領」「マニュアル」という膨大な規程類。これらのリファレンスを、XMLデータベースを採用した「規定集電子化システム」で、単なる紙の電子化にとどまらない検索性、差替え、改版時のスピード、コストの削減を実現。

規程集電子化システム

株式会社福岡銀行/株式会社広島銀行

銀行業務のスピード化とコスト削減を目指し、XMLデータベースによるWebベースの規程集電子化システムを構築

株式会社福岡銀行/株式会社広島銀行様画面キャプチャ

地域密着型の堅実で革新的な地銀「福岡銀行」

100万都市福岡に本店を構える福岡銀行は、地域密着型の堅実な経営と金融環境変化への柔軟な対応とを両立させる全国でも屈指の地銀の1つだ。

銀行業務は複雑である。個人・法人といった顧客別にきめ細かい対応が求められる。サービス業でありながら、顧客の預貸金を扱うゆえに事務作業の厳密さも必要となる。全ての店舗で同様のサービスを展開するためには、全行員に対する高レベルの教育も欠かせない。経営の安定性を保つためには、激変する金融環境に対し、柔軟な対応と堅実な対応という、相反する選択肢へのバランス感覚が必須となる。

このような困難さを抱えるなか、同銀行は九州地域密着型の経営方針を打ち出すことで、ターゲットとなる市場を絞込んでいる。地域の経営者とともに歩み、ともに育っていく「ふくぎん経営者クラブ」の運営などは、同銀行の姿勢を表しているといえよう。

銀行業務のハードル ~ 高レベルの厳密さを要求されるサービス業 ~

銀行業務には厳密さが要求される。顧客の大事な口座を取扱う以上、ミスは許されない。また、銀行業務は現代の経済活動の中心的な役割を占めているため、スピード化は重要なテーマだ。さらに顧客に対し、全ての店舗で同一のサービスが受けられるような業務体制を整える必要もあるなど、さまざまな角度から銀行は事務作業を共通化し、合理化しなくてはならない。

反面、銀行業務は高度な人的作業を必要とするサービス業でもある。各店舗に訪れる個人・法人の顧客は、必要とするサービスがそれぞれ異なるため、きめ細かなサービスを展開する必要がある。迅速で厳密な作業と、多様な要求に応えるための人的作業。このように、ある意味で相反している要求を高度なレベルで解決するには、業務に対する厳密さと、各顧客の要求に対して個別に応える柔軟性とが必要になる。

そこで、銀行業務のガイドラインとして用いられるのが「行規集」「事務取扱要領」「マニュアル」という膨大な規程類だ。銀行内の規則や規定、銀行業務の預金・為替・融資・ローン・外国為替などに対する事務手続を文書化したもので、全行員はこの規程類をリファレンスとして、サービスの土台となる事務を遂行する。

問題はコストとタイムラグ ~ 紙ベースの欠点 ~

こうした規程類は、すべての銀行に存在するが、福岡銀行では印刷してファイリングすると60冊以上にもなる膨大な量の文書が作成されている。従来、同銀行では、こうした紙ベースの規程が本部・各店舗に配布されていた。しかし、紙ベースの場合、決定的な弱点が3つあった。

1:高い管理コスト

事務の重要なリファレンスである規程類は、各店舗に保管され、閲覧される必要があるため、これには維持のためのコストがかかっている。まず、各店舗で数十冊にも及ぶ紙ベースのファイルを置くための保管スペースが必要である。また、160を超える店舗および各本部に配置するための印刷コスト、さらには、それを配布するための作業も必要となる。また、規程類は金融環境の変化にあわせ、事務内容が変更されるたびに改訂されていく。その場合は部分的に差し替えることとなるが、そのための人的なコストも発生する。とりわけ、事務取扱要領の改訂は、不定期にしかも頻繁に発生する。制度改正や新しい金融商品の発売等により、年間数百回行われており、これらのコストは累積して膨大なものとなっていた。

2:改訂と差替のタイムラグ

規程類を紙ベースで配布するためには、印刷業者に印刷工程を委託する必要があり、改訂の決定が行われてから配布されるまでにタイムラグが生じていた。早急な改訂決定に対して規程類の変更が追いつかなくなった。

3:リファレンスとしての取り扱いの困難さ

規程類の9割を占める事務取扱要領やマニュアルはリファレンスであり、使い勝手が良くなければ意味が無い。しかし、紙ベースでは、数冊のファイルを繰らなければ目的の項目に至らないことがある。さらに、頻繁に部分的差し替えが行われるという性質も問題となる。銀行の業務は複雑なため、ある顧客に対して必要となる1つの事務に関連して、数多くの事務手続を複合して行わなければならない事もある。しかし、紙ベースの事務取扱要領では、こうした関連する事務手続は別の場所に記載されていることもある。したがって、事務取扱要領を閲覧したとき、中心となる事務の変更箇所には気付くものの、関連した事務の変更には気付かないということも起こる。

弱点を一気に克服 ~ 広島銀行とともに「eXcelon※」とJavaで電子化に着手 ~

株式会社福岡銀行/奈須孝明氏の写真

同銀行では、広島銀行との基幹システムの共同化とともに、両行の事務取扱の全面的な刷新も念頭にあった。しかし、上記の問題点を考えると、新たに紙ベースで共同の事務取扱要領等を作成するといった選択肢は選ぶことはできない。そこで、両行で幾度にもわたる協議を重ねた結果、インターネット技術を利用してネットワーク経由でデータを配布・参照するクライアント/サーバシステムが候補に上がってきた。

福岡銀行には、ネットワークを利用するアイデアが、イントラネットベースの電子通達システムを導入した時からあり、ネットワークを介してデータを配布すれば、多くのコストは抑えることができるし、配布スピードも向上してリアルメンテナンスも可能となる。

しかし、紙データをPDFデータなどに変更するだけでは、取り扱いの困難さが残ることには変わりない。データベースを導入し、単なる文書管理以上のクオリティを出す必要があることは明らかだった。また、一般の行員が使用しやすい形にするためには、Webブラウザで閲覧できるようにする必要もあった。

両行は、様々なITシステム関連会社と開発検討を行った。RDBMSなども含め、様々な選択肢があったが、最終的に選ばれたのは、設立以来、PCソフトウェア市場黎明期を牽引し、福岡に本社を置く株式会社システムソフト(以下、システムソフト)が提案する、Webブラウザを利用して閲覧を行う「規程集電子化システム」だった。データベースにはXMLデータベース「eXcelon※」が採用された。

採用理由は、

  • Webブラウザでの閲覧を考えた場合、サーバサイドでの技術を導入するために必須となってくるJavaとの親和性が高いこと。
  • 一万数千ページという膨大な文書データを扱うだけの堅確性とスピードとを兼ね備えたデータベースであること。
  • 新しい規程が追加された場合にもテーブルを作成し直す必要が無く、RDBMSに比べて柔軟でダイナミックに対応できること。

などがあげられる。

同システムでは、入力ツールを利用して規程類の各コンテンツ(文章や図等)を再利用が可能な部品単位のXMLデータとして管理を行う仕組みを実装しており、将来的には、単に本システム上での利用のみならず、規程類の各コンテンツを利用した他システムへの自動配信や自動連携等のワンソース・マルチユースも実現可能である。また、全文検索機能や索引機能と組み合わせた利用によるスピーディな情報の収集が可能となっている事も重要な要件の一つだ。

両行とシステムソフトで仕様を注意深く検討し、構築したのが、現在福岡銀行で稼働している「規程集電子化システム」だ。これは、次のような仕様になっている。

まず、サーバ側には規程類を入力・改訂するためのJavaベースの専用入力ツールが用意されている。この専用ツールによって、入力時にワード、エクセルで文章を作成できるため、XMLなどの知識を持っていなくても、入力・改訂作業を行うことが可能だ。

「ワードやエクセルなどから入力されたデータは図・表・文書にデータ分類され、それぞれXMLオブジェクトとして『eXcelon※』に管理・格納されます。次に、それぞれが関連付けされてから、サーバにアップロードされる仕組みになっています。この時には、PDF等で作成された一般アプリケーションのデータを関連付けることも可能です」(システムソフト 青木氏)

これらのデータは、ネットワークを介して各店舗のPC上で閲覧できる。閲覧時には一般的なWebブラウザを利用するので、閲覧側でもXMLに関する知識は必要とされない。新しく追加・改訂された項目は「最新情報」としてピックアップされ、全行員が随時確認できる。画面は表形式をフロー形式に切り替えできるという、XMLデータの特性を活かした表示形式が採用されている。また、現在閲覧している事務取扱要領に関連する項目はリンクで繋がれており、1回のクリックで容易に確かめることができる。これにより、閲覧スピードとリファレンス性の向上とを両立することが可能になった。

「規程類は複雑な構造をしており、一般的なHTMLによるリンクは難しい。しかし、『eXcelon※』なら、そういった複雑な構造にも対応できる能力があります」(システムソフト 多々野氏)

閲覧頻度などのデータは、各XMLパーツごとにログの形でサーバに残されるようになっている。閲覧箇所と頻度とがわかるため、現在の業務で重点的に必要とされている規程の種類が、本部側から一目で把握できる。こうしたシステムを採用することで、上記の3つの問題点が同時に解決された。印刷・配布・差し替えにかかるコストが年間で50百万円程度削減されるという。サーバのデータが変更されると同時に各店舗で閲覧できるため、スピード性も向上。データをリンクさせることにより、リファレンス性も大幅に改善された。開発期間は規程類の標準化作業も含め1年半程度だったという。

次の構想は、顧客満足度を向上するためのシステム化を目指す

「閲覧数は確実に伸びています。ログを見ていると、急速に増加していることがわかりますね。また、画面のレスポンスが非常に早く、クリックして表示されるまでの速度は、2秒とかからない。」(福岡銀行 システム部 奈須氏)

株式会社福岡銀行/花田尋美氏の写真

事務取扱要領が電子化されたことに伴い、各行員には多少の戸惑いも見られたようだ。電子化当初は、紙ベースの事務取扱要領を閲覧する行員が多かったという。

「しかし、稼働後6か月を経て一日の閲覧件数は、当初の約10倍(5,000件)となり、それも杞憂に終わりそうです。行員に見て欲しい関連箇所にリンクをはって、ジャンプさせる機能を多く活用し、業務を横断的に閲覧させることもできます。」(同事務統括部 花田氏)

同行が次に構想しているのは、同システムをより戦略的に位置付けることだ。現在、後方的な機能を担うツールとして使われる同システムを、「顧客満足度を向上させるための積極的な意味合いを持ったツールとして捉え直す」(奈須氏)。そのための能力が要求されるシステムは、「eXcelon※」によってすでに基盤として構築されたのである。広島銀行との共同化の中で再構築したデータベースマーケティングシステムや、新たに共同構築したCRMシステムとの連携という壮大な構想が描ける所以でもある。

株式会社福岡銀行/新野泰治氏の写真

「使用実績(利用結果明細)を見ていくと、様々なことがわかります。特に、閲覧される事務取扱要領の頻度から、現時点で必要とされている銀行のサービスの形が見えてきたのは大きな収穫です。電子化したことで営業店が、どの部分を利用し、何を必要としているかが把握できるようになり、ポイントを絞った改廃が可能となります」(同事務統括部 新野氏)

「将来的には、このデータとお客様から頂いた様々のご意見とをクロス表などで分析したいと考えています。この分析結果は、各種の事務手続きをよりお客様の皆様に便利になるように改訂するための基礎データとして利用できるはずです。」(同システム部 篠崎氏)

同システムは、XMLを採用した特性上、柔軟な運用性を持っており、他行の事務規定にも転用できるため、現在は広島銀行をはじめ、熊本銀行、親和銀行などにも広く横展開されている。


※eXcelon(現行製品名:NeoCoreEX。現在は販売を終了し、サポートのみ対応中。)

お客様プロフィール

株式会社福岡銀行

株式会社福岡銀行 写真
〒810-0001 福岡市中央区天神二丁目13番1号

  • 創業:明治10年9月
  • 代表者:柴戸 隆成
  • 総資産:12兆3,634億円
  • 預金:9兆1,581億円
  • 貸出金:8兆2,606億円
  • 資本金:823億円
  • URL:https://www.fukuokabank.co.jp/

株式会社広島銀行

株式会社広島銀行 写真
〒730-0031 広島市中区紙屋町1丁目3番8号

  • 創業:明治11年11月
  • 代表者:池田 晃治
  • 総資産:7兆2,055億円
  • 預金:6兆7,975億円
  • 貸出金:5兆2,672億円
  • 資本金:545億7300万円
  • URL:https://www.hirogin.co.jp/

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