海外ITアウトソーシングのプロジェクト現場におけるソフトウェア開発~フィリピンで優秀なプログラマを確保することは幻想なのか(2)

前回、プログラマに要求される能力が高度になってきている、という話をしました。今回はそのような高度なプログラマをフィリピンで確保できるのか、自分の経験を踏まえて検討していきたいと思います。

存在はしている

私がフィリピンで出会ったプログラマの中で、曖昧な要求から品質の高いプログラムを作成できるレベルの高度プロラマは、今のところ1名のみです。新卒も含めた出会った全プログラマは100人ぐらいです。以前アウトソース先として働いていた中国では一人たりとも見かけなかったので、幻想ではないとは言えるでしょう。ちなみに、日本で出会ったそのようなプログラマは3人です。

やはり非現実的

しかしそのような高度プログラマはやはり簡単には確保できません。採用面接の時点では、ある程度の知識や経験、コミュニケーション能力は判断できますが、複雑な要件からデータベースの設計が出来るか?どれだけ広範な問題に独力で対処できるか?対処スピードは速いか?保守性を考えた設計を出来るか?等を判断するのはほぼ不可能です。それは数プロジェクト一緒にやって、見えてくるものでしょう。

では仮に採用者の1%がそのような能力を持ってるとしたら一人の高度プログラマを見つけるのに、100人を雇わなければなりません。採用コスト自体が大きくなり過ぎますし、使えないと判断して解雇するまで他のプログラマの給与コストも無視できません。一部の超大手以外ではそのような手段は難しいところです(逆に超大手はフロントとバックエンドできっちり分業化されていたりするので、高度プログラマはそれほど必要ではないかも知れません)。

それなりを育てる

では要求を少し落として、仕様さえあれば、独力でそれなりの品質のプログラムを作成することが出来るプログラマはどれくらいいるのでしょうか。経験上10人に一人ぐらいは、このレベルに達することが出来るようになるかと思います。採用コストもオーバーヘッドコストも現実的ではあります。もちろん採用後にトレーニングで鍛えて、このレベルに上げていく必要があります。具体的なポイントとしては、

1.採用

仕様を理解し、問題があったときに質問できる英語能力。フィリピン人は誰でも英語がペラペラというイメージが強いですが、思ったより英語能力の差があります。英語が出来ないと、仕様を正確に理解できないし、分からないときに質問できないし、ネットでの調査もままなりません。エンジニアとして凝り性かつ、ユーザのことをちゃんと意識できるかどうか。これは履歴書で判断出来る部分があります。フィリピンでは履歴書は日本と違ってフリースタイルなので、個人によってフォーマットがかなり違います。顔写真の縦横比がちゃんと合っているか、フォントがそろっているか、ヘッダーのスタイルがそろっているか等、プログラマとしての適正を判断出来るポイントが有ります。

2.トレーニング

現在フィリピン、特にセブではIT系の大学を卒業する学生は大量にいます。そのなかで採用されるのはやはり、クラスで上位の人達になります。元々自分の事が大好きなフィリピン文化に、今まで周囲より優秀だったというプライドがあり、自分のやり方が正しいと思っている新人も多いです。単純に間違いを指摘しても聞きません。一番効果的なのは全く同じ機能をよりスマートに早く実装して見せることです。もちろん駄目な部分は、理由を付けて論理的に何回も指摘する必要もあります。

またフィリピン人従業員への接し方の鉄則としてよく言われる事として、人前で叱ってはいけない、というのがあります。日本人上司が日本と同じようにオフィス内で従業員をきつく叱責し、叱責された従業員が逆恨みして上司をナイフで刺したという話も聞きます。しかし経験上、大学卒業レベルの人材であれば、きちんと論理的に間違いを指摘されれば、納得してくれます。実プロジェクトでは誰かが間違った時には、チーム内で共有するべきなので、トレーニングの段階から必ず間違いの指摘は人前で行うようにして慣らしていきます。もちろん、きちんと納得できるように理由は必須です。

3.評価

フィリピン人は日本人と比べて比較的、自分の給料を同僚や同じ業種の友達にオープンにする傾向があります。自分の給料が周囲と比べて高いのか低いのか、他の会社では自分と同程度のエンジニアがいくらぐらいもらっているのか判断しやすい状況にあります。なので出来る人材は積極的に評価して給料に反映していかないと、すぐに転職してしまいます。

それでも難しい

ポイントを幾つか検討しましたが、私もまだフィリピンで使えるプログラマを確保する方法についてどうしたらいいのか、はっきりと見えているわけではありません。ビジネスとして何人のオーバヘッドやトレーニング時間が許容可能なのか、誰が採用・トレーニング・評価するのか、PMが実プロジェクトを回しながら出来るのか等色々課題はあるかと思います。今後もソフトウェア開発に携わる者として、模索していくしか無いと思っています。

ライター:nagata

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