サイバーテック セブITアウトソーシングセンターでは、ツールやシステムで一括処理できないMS Office文書ファイルの目視チェックや修正といった作業を行っている。旧バージョンのMS Office文書ファイルを最新バージョンへと移行するといったマイグレーション業務が代表的なもので、大量のファイルのマイグレーションが必要な場合、その作業をアウトソースする企業が増加している。
ITアウトソーシング ケーススタディ
MS Office文書ファイルのマイグレーション業務
O社
背景
製造業において、設計部門が作成する設計書や、生産現場で運用される作業指示書などは、業務プロセスに欠かせない重要な業務文書であり、サプライチェーン・マネジメントの観点からも、内容に正確性が求められる。しかしながら、これらの技術文書は意外とWord、Excel、PowerPointなどのMS Officeで作成されている事が多く、さらに同文書をプログラムやシステムに取り込み、文書の統合や帳票の自動生成を行うなど、高度な活用が行われている例も多く見受けられる。
大手製造業のO社(以下、同社)では、かなり以前より、設計部門が作成したWord、Excel、PowerPoint等の技術文書ファイルを業務システムに取込み、文書の統合や帳票作成を行った後に、作業指示書として再利用している。このような文書は、同社に限らず、誰でも手軽に扱えるMS Office文書ファイルで作成~運用がなされることが多いが、手軽であるがゆえ、様々な問題が存在することも事実である。
課題
多くの製造業が、MS Office文書ファイルを業務で使用するにあたり課題を抱えている。それは、複雑な図表が多用されているがゆえ、旧バージョンのMS Officeソフトで作成されたファイルを最新のMS Officeソフトで読み込むと、図表部分にずれが発生することや、さらにひどい場合は、そもそもバージョンの違いによるエラーでファイルが開けない、といった事が発生する。
現場の担当者は、エラーが発生した場合は問題となるファイルが明示化されるため、とりあえず開けるようした後で内容をチェックし修正を行えば良いが、問題は「ファイルを開けるが、ずれが発生してしまう」場合である。大きく崩れた場合は、古いMS Office文書ファイルと新しいMS Office文章ファイルを検査した上で、その都度崩れた文字や図形オブジェクトを修正することで対応していたが、他のMS Office文書ファイルにもずれが潜在的に発生している可能性は十分予見される状況であった。同社では、MS Officeの最新バージョンを導入する事に伴い、技術文書のファイル自体も.doc、.xls、.ppt から .docx、.xlsx、.pptx、つまり、旧バージョンから新バージョンにマイグレーションする事を決断したが、マイグレーションが必要なファイルが、数万ファイルにも及ぶことが判明した。
同社では、限られた予算の中で大量のMS Office文書ファイルをマイグレーションする方法を模索していた。まず検討したのは派遣会社からのスタッフ派遣により作業員が常駐する形でプロジェクトを進める方法だが、派遣スタッフの場合は生産性により総コストが変わってくる。したがって、今回のように総予算が決まっている場合は適さないということとなり、社外のパートナー企業にアウトソースする方法が選択された。
アウトソース先の企業として、国内で実施する企業と海外オフショア委託で実施する企業の双方を検討し、複数企業に声をかけた。その中で、アウトソーシング先の企業を選定するうえで重視したのは、予算内で実施する必要から安価である事はもちろんのこと、技術文書であるため、高い品質が維持できる企業であることが必須であった。そのような観点において、作業品質や情報管理などのセキュリティ面で安心できる委託先として、責任感が高い日系企業である事は必須であった。そして、同社の厳しい条件をクリアし、マイグレーション作業のアウトソーシング先に選定されたのは、日系オフショア企業である、サイバーテックがフィリピンに有するセブITアウトソーシングセンターが提供するITアウトソーシング・サービスであった。
選定のポイントは、予算内で実施可能である水準であった見積費用が安いだけではなく、フィリピン現地の日本人マネージャによる体制面や、品質に対する取り組み方、さらには情報管理や契約面での安心感が確認できた事が大きなポイントとなった。また、過去に同様のマイグレーション作業を行った他社事例があった事もサイバーテックが提供するITアウトソーシング・サービスを選定した大きな理由であった。
人材派遣サービス | 国内アウトソース | 海外アウトソース | |
---|---|---|---|
費用 | 40万円/人月~ | 60万円/人月~ | 20万円/人月~ |
品質に対する保障 | 実務経験者で同社が責任を持つ必要あり(派遣スタッフによりばらつきあり) | 委託先企業で担保 | 委託先企業で担保 |
準備が必要となるリソース | 作業場所や人数分の端末の確保、およびソフトウエアライセンスが必要 | 不要 | 不要 |
要員のアサイン | 人手不足につき困難 | 企業として請けるため気にせずとも良い | 企業として請けるため気にせずとも良い |
コミュニケーション | Face to face | メール/電話 | メール/スカイプ/プロジェクト管理ツール |
MS Office文書ファイルのマイグレーション業務の流れは以下の通り
フィリピン・セブITアウトソーシングセンターの日本人ディレクターは、マイグレーション作業前に作業手順の文書化・チェック基準・目標生産性(1件当たりの作業時間)に関する要件を整理し、それを文書化した。さらにサンプルを使った事前トレーニングを実施し、実際の作業と同じプロセスをまわすことで、要件定義の内容に大きなブレがないかの確認を行った。またこの段階で、作業プロセスを効率化するための自動化ツールの適用可否についても検討を行った。
フィリピン人のITオペレータは、MS Office文書ファイルの差分を目視チェックする作業において、フリーのファイル比較ツール「WinMerge」を使用した。「WinMerge」は、ファイルやフォルダを比較して相違点を色分け表示できるソフトで、テキストだけでなく画像の差分がビジュアルで表示する事ができる。これによりMS Office文書が修正対象なのかどうかを目視チェックする工程の効率化を図り、すべて手作業で実施した場合に比べて、1ファイルあたりのチェック時間を約半分にまで短縮する事ができた。もちろんセブITアウトソーシングセンターで実績があるツールである。
ファイルの修正は、全てフィリピン人のITオペレータが見本ファイルを見ながら手作業で修正した。1件当たりの作業時間は、平均5分~15分であった。修正作業は、Word、Excel、PowerPointの基本操作ができるITオペレータ5名+メンバーを管理・サポートするフィリピン人のリーダー1名の合計6名でプロジェクトチームを構築し、豊富な経験を有するフィリピン人のみで実施した。
最後に日本人ディレクターが作業記録を全てチェックし、品質を保証するエビデンスとともに、指定されたサーバに週次で納品データをアップロードして、作業完了となる。
なお、MS Office文書ファイルのマイグレーション業務のスケジュールは以下の通り。
効果と展開
プロジェクト開始時にお客様と、作業品質と作業生産性の目標値(1件当たりの目視チェックの作業時間・ファイル修正作業の時間・納品後の差し戻し率)を設定した【表2:作業品質と作業生産性の目標値】。プロジェクト終了時にその評価検証を行ったが、いずれも開始前の目標値を上回り、マイグレーション業務は当初予定のスケジュール通り完了した。
目視チェックの作業時間 | 120秒/ファイル |
---|---|
ファイル修正作業の時間 | 300秒~900秒/ファイル |
納品後の差し戻し率 | 5%未満 |
同社は、今回のMS Office文書ファイルのマイグレーションで蓄積したノウハウと実績をベースに、プログラム開発やシステムマイグレーション、Webコンテンツのマイグレーションなど、サイバーテックがフィリピン・セブITアウトソーシングセンターで実施する海外オフショア委託サービスを他業務へ活用することや、横展開を模索している。
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