営業・企画職のためのXMLレシピ 第8回:製品マニュアルなどの技術文書のXML化は普及段階へ

XML/XML DBのサイバーテック:連載コラム/営業・企画職のためのXMLレシピ

2011年6月8日
クロスメディア開発部 部長 小野 雅史

今回は、製造業の設計やテクニカルサポート、保守サービスに関わる業務に欠かせない「マニュアル」について述べたいと思います。「マニュアル」と言っても非常に多岐にわたるため、今回はその対象を「技術ドキュメント」に絞ってお話をします。

技術マニュアルとは、製造業または製品を販売や保守サービスを行う企業が、以下の様なシーンで利用する文書を指します。

メーカー(工場などの現場部門)
・製品の製造、組み立て時に手順書として使用

メーカーの製品を販売または保守・点検サービスを行う企業や部門
・製品の販売時に顧客に対して、詳細なカタログスペックを提示する際に使用。
・修理点検等の保守サービス現場での手順書やチェックリストとして使用。
・コンシューマ製品であれば「ユーザーズマニュアル」として使用

ボーイング社の航空機マニュアルは、XML。

まずはこの分野の歴史から。アメリカの航空機メーカーのボーイングは、2000年頃には、マニュアルの電子化(=SGML化)に取り組んでいました。アドビシステムズ社の「FlameMaker」(当時はFrame Technologyと言う会社の製品)がメンテナンスマニュアルの執筆に利用されたのは有名な話です。その後、SGMLのサブセットであるXMLの登場にあわせて、紙のマニュアル制作のみならず、データの一元管理や、対外的なデータ交換の基盤(EDI)フォーマットとして発展してきました。

この流れを受け航空機業界だけでなく、全ての製造業が、技術マニュアルの作成や運用、さらには再利用にXMLを利用しています。

技術ドキュメントの特長とDITA

技術ドキュメントは、製品ジャンルにより説明文主体であるもの、表組み主体であるものの違いはありますが、階層構造を持つのが一般的です。また、本文中から関連する他ドキュメントへの参照関係が多いのも技術ドキュメントの特長です。

元々IBMが社内技術文書のフォーマットとして研究開発していた、「Darwin Information Typing Architecture(DITA:ディータ)」というXMLベースのアーキテクチャの中に、「トピック」「マップ」といった概念が既に存在しました。このDITAは、2005年にOASISという標準化団体によって標準化された事で、一気に製品解説書、操作手順書、技術情報サイトのWebページ用データ、そしてオンラインヘルプなどの技術文書の標準フォーマットとなりました。現在も、DITAに対応した様々なドキュメントエディタやシステム製品が発売されています。

DITAについては、以下のサイトに詳細が書かれているので、一度参考にしてみては如何でしょうか?

技術ドキュメントに関する課題

1「ワンソース・マルチユース化」

この分野のお客様とお話をする機会があると、必ずと言って良いほど次のような課題を口にされます。

「紙のマニュアルが他の電子媒体に転用できていない。電子マニュアルは単に紙マニュアルの制作過程でできたPDFの事を指すが、これは本来あるべき姿の電子マニュアルではない。制作期間や予算が限られているため紙のマニュアルの作成だけで今は精いっぱいだ」

企業として資産価値の高いコンテンツである技術ドキュメントを二次利用する意義は理解されているのですが、その具体的なメリットを組織横断的に推進するにはかなりの時間と労力が必要なようです。

【技術ドキュメントをワンソース・マルチユースするメリット】
  • 紙のマニュアルと同時に電子マニュアルがWebに配信され、リアルタイムにユーザがWeb経由で製品情報を検索、参照できるようになる。
  • 海外に輸出されている製品でもカタログスペックが、販売先の国の言語に翻訳されて即時公開されるようになる。
  • サービス・マニュアルをスマートフォン経由で参照できるようになり、現場のサービスマンの顧客対応品質の向上につながる。

電子マニュアルなど電子媒体への二次利用の可能性は無限大と言って良いでしょう。その目的は、「ビジネスチャンスの創出・売上拡大。顧客満足向上」である事を忘れてはいけません。またこれらのコンテンツを二次利用するためには「校了後のマスタコンテンツ」のデータベース化が必須であることも付記しておきます。

2「制作ワークフローの整備と効率化」

一方で、制作に近い部門のお客様とお話をする機会があると、紙のマニュアルの制作効率化に関する課題をあげられる方が非常に多いのも事実です。

具体的には、執筆や入力エディタを含めた編集環境に関する事、翻訳を行う際のワークフローが確立されていない事、さらには複数の部門や制作会社、印刷会社との制作プロジェクトの管理上の課題を良く耳にします。

このような制作現場の業務効率化への取り組みだけでも、マニュアル制作部門から制作会社、印刷会社まで巻き込んだ一大プロジェクトであるため、「まずは制作効率化を先に進めて全体のコストダウンを図り、効果が出始めたらワンソース・マルチユースに取り掛かる」という課題解決のプロセスは、決して間違いではありません。

最後に ~ 待ったなしの「マルチデバイス化」への対応は?

近年、スマートフォンの普及が世界レベルで進んでいます。今まで書いたお話は、1年前であれば、誰もが納得するお話だったと思います。しかし今や、技術ドキュメントは、紙とWebだけに対応するだけでは不十分なのです。今まで関係が薄かった「モバイルデバイスへの対応」を必要とされる時代が急速に訪れたからです。

「制作効率化を実現してからデータベース化を行い、それからマルチユース展開を図りましょう。3年後には本格的に実現したいですね」

これでは遅くありませんか?

今こそ、企業は自社コンテンツの活用戦略を明確に描き、上記の課題に対してどこから着手すべきかをトップダウンで行う事が必要ではないかと感じる、今日この頃です。

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